16時21分

1997年秋生まれ 暮らすぞ

歩いてゆける距離の海

引っ越しをして2週間経った。昼過ぎに工事のひとが来て、Wi-Fiをつないでくれた。親切にプリンターの設定方法までおしえてくれたのがうれしくって、昨日斜向かいの八百屋さんでちょっと高かった柿を帰るときに渡した。

 

ひとり暮らしだ。人生2度めの。いちばんうれしいのはわたしだけのキッチン。一口コンロだけれどそれでもうれしい、ちゃんとガスのコンロだから炎が見られる。友人のいない街とあってめったに来客もないので食卓に切り花を飾ったりはしていないけれど、うちには林檎もバナナも柿もある。先週は柿でなくてキュウイだった。くだものはつやつやとうつくしい。

暖房はまだ一度もつかっていなくて、さむいときは友人の編んでくれたアフガン編みの靴下をはいたり、片手鍋にお湯を沸かして紅茶(どこのスーパーでもいちばん安く売ってあるような)を淹れたりしている。それで凌げるくらいにはあたたかくまだ気温も2ケタあるのだが、港町なので潮風が吹きつける。前髪なんて気にしていては前にすすめない。

 

学校のはじまる1月まではたいそうのんびりとしたもので、引っ越し後の手続きのほかには家事くらいしかやることがない。おもいきって脱毛サロンでローンを組み、林檎班*1に入会し、近所のお肉屋さんでスタンプカードをつくってもらった。火・木・土は鶏肉と豚肉が割引。

 

たくさんのことを乗り越えたなぁとおもう、たとえばつい先月までは両親との関係性(宇多田ヒカルの歌詞を拝借するならば生い立ちのトラウマというやつだ)に疲弊していたし、今年の春先までは親友におもわず失踪したいとこぼすくらいそのことで追い詰められていた。そしてこの日記の最初の投稿をした昨年梅雨入りの頃に比べれば、ずいぶん縦になっていられるようになった。食べ終えた食器を洗うのも洗濯を干すのも掃除機をかけるのもこまめにできるようになったし、恋人いなくてもともだちがいるから人生大丈夫だなとおもえるようになった。新調して丸眼鏡にしたおかげでコンタクト姿でないじぶんをかわいいとおもえるようになったし、徒歩30分弱の海辺まで歩いてマジックアワーを拝みにゆけるくらい、じぶんひとりでもたのしく生きていられるようになった。

 

夜がきてベッドに上がり毛布にくるまると、まだまだ泣けてきてしまったりもするのだけれど、そんなときはこう考えればいいのだ。たとえばこの調子で生きていれば、脱毛が終わってつるつるの腋になることができるし、椎名林檎の愛好家歴いまはたった3日めだけれど、そのうち愛好家歴15年を名乗ることだってできるかもしれない。そしてそのあいだに行きつけの肉屋ではカードにたくさんのスタンプが貯まり、何度も500円券がつかえるだろう。この街で暮らす5年のあいだにだいすきな友人の結婚式に呼んでもらえる可能性だってあるのだし、学校に熱心に通って手に職をつけてしまえば、住んでみたかった東日本に暮らしてみることも、貯金をしてイタリアへドゥオモを見にいくこともできるだろう。そしてそうやって生きていれば、わたしのたいせつな10年来の友人が、いつか50年来の友人になる日も来るかもしれない。

 

暮らすぞ。何度泣くことになるとしても。

 

*1:椎名林檎のオフィシャル會員サロン